10代からホラー映画を観漁っていた私が、今現在、自分の中で不動となっている怖すぎる作品10本を紹介します。10作品に絞るという前提なので、僅差で選外となった作品が山のようにあります。それらを紹介できないのは残念ですが、選んだのは現時点で揺るがない10本ですので、間抜けにも思い出せていない作品が無い限りは、入れ替わることのない確定的な恐怖作品達です。勿論この先に公開される作品でこの10本を上回る恐怖を味わうことでもあれば、この記事もアップデートするでしょう。
有名作に偏ってしまっているので、新しい発見的なのは無いかもです。こればかりは、あくまでも私の中での順位なので、良いものは良いのでどうしようもないですね。そのうち選外となった作品達をまとめた記事でも書くかも知れませんけど。
それでは、私が恐怖したホラー映画ベスト10作品を、(一部のぞいて)ネタバレ無しで紹介していきます。とくに順位付けはしていないし、公開年順でもなく、単に私が思い出した順に並べてあります。
サンゲリア(1979)
『サンゲリア』(原題:ZOMBIE)は、ルチオ・フルチ監督のゾンビ物のホラー映画。1979年イタリア・アメリカ合作映画、日本劇場公開は1980年5月24日。
あらすじ
ニューヨーク湾に漂うクルーザーを調査していた警官が、船内にいた男に襲われ噛みつかれ殺される。男は体が腐敗しており、一目に異常性を感じる風体であった。この事件に端を発し、クルーザーの持ち主の娘と新聞記者の男は、父親の住むカリブ海にある島へと向かう。行き着いた島内では死人が蘇り、生者を貪り食うゾンビの巣窟だった。
推しポイント
間の繋ぎ方などに古さは感じるし、島に辿り着くまでの海中戦(ゾンビVS鮫)はちょっとしたギャグに見える。だけど私は、数あるゾンビ映画の中でも今だに頂点に位置していると思っています。ゾンビのメイクアップは汚らしくて不快感があって素晴らしいし、何より「動き」が素晴らしい。昨今のゾンビ映画では、やたらと俊敏なゾンビが登場するのがデフォみたいなところがあるけど、それはもう、ゾンビでなくても良くね?って思っちゃう。ゾンビと言えば脳が腐ってるから1つの事を除いてなにも考えられず、その唯一の行動理念である生者を喰らう、そのためにノソノソズリズリとにじり寄ってくる、それこそが恐ろしいわけだ。自分を喰らうために複数体のゾンビが「ゆっくり」と近づいてくる、恐ろしい。これが飛びかかってくるとなるとジャンプスケアと変わらない。それと、島内の薄気味悪い雰囲気を煽るおどろおどろしい楽曲も素晴らしい。
イット・フォローズ(2014)
『イット・フォローズ』(原題: It Follows)は、2014年のアメリカ合衆国のホラー映画である。監督と脚本をデヴィッド・ロバート・ミッチェルが手がけており、主演をマイカ・モンローが務めている。
あらすじ
女子学生である「ジェイ」は、知り合った男と肉体関係をもつ。事後、男にクロロホルム(睡眠薬)を嗅がされ昏睡してしまう。目が覚めるとジェイは車椅子に拘束され、男から異常な事情を説明される。今から「それ」が来ると言う。「それ」はゆっくりと、どこまでも追ってくる。「それ」の姿は人間である。「それ」は当人にしか見えない。「それ」に捕まると必ず殺される。「それ」から逃れるには、誰かと肉体関係を持つこと。性交相手に「それ」を伝染す(移す)ことが唯一の助かる方法、だと知らされる。
推しポイント
設定などが過去作品の掛け合わせ的なのは近年の映画の特徴かもしれない。多くの作品にそういった面を感じるが、本作はティーンエイジャー達の抱える倦怠感や、空虚感、少しの甘酸っぱさがモダンな画角に収まり、意外性をもった展開と曖昧な結末が鮮烈な印象を残した。個人的にもっとも刺激的だと感じた点は、少しネタバレ(上映時間中頃)になるが以下の点である。「それ」の姿は主人公であるジェイにしか見えず、周りの友達は怯えきったジェイの様子に同情し逃げることに協力はしてくれる。しかし、「それ」の存在に関しては半信半疑で、小旅行のように車で遠くのビーチまでいき、日光浴や海水浴をして半ば楽しんで過ごしている。そんな仲間達だが、その場まで追ってきた「それ」にジェイが襲われる状況(具体的には掴まれたジェイの髪の毛が空中に浮く)を目撃し、一気に事実なのだと認識する。この展開が新鮮で、この作品が自分の中で特別感のあるものとなったのだ。従来の映画だと最後になってやっと異常な事態を周りの人間が認識したり、途中で認識してくれた人物はすぐ殺されてしまう。また、本作の評価の賛否を分けている結末についても私は肯定派だ。
ヘレディタリー/継承(2018)
『ヘレディタリー/継承』(ヘレディタリー/けいしょう、Hereditary)は、2018年のアメリカ合衆国のホラー映画。監督はアリ・アスター、主演はトニ・コレットが務めた。
あらすじ
一家の年長者だった老女が亡くなり、残された家族は悲しみを乗り越えようとする。そんな中、家の中で怪奇現象が発生。さらに、故人が溺愛していた13歳の孫娘が異常行動をとり始め、やがて衝撃的な事件が一家を襲う。
推しポイント
終始漂う不穏感と、終盤のスピード感、明かされ全てが繋がる結末で、観終わったら爽やかに疲れる。2000年代以降の映画で観た中では断トツで突き抜けた怖さと、圧倒的な作品としての質の高さがある。ボーッと観てると展開が理解出来ずに置いていかれて終盤は何が何だか状態になる。この作品の監督は宗教や伝承といった人類が紡いできた文化的要素を物語の骨子とする傾向が強く、場面やセリフを追っているだけでは理解し難い脚本が特徴的だ。ビジュアルだけで怖がらせるホラー映画を作らない。裏で進行するテーマにこそ恐怖を感じさせる、ある意味では表と裏の二重構造で恐怖させる仕組みを構築しているとでも言えばいいだろうか。これは大いに成功しており、血で彩られただけの多くのホラー作品とは一線を画す重厚感のある作品に仕上がっている。
死霊のはらわた(1981)
『死霊のはらわた』(しりょうのはらわた、原題: The Evil Dead)は、1981年のアメリカのスーパーナチュラル・ホラー映画。サム・ライミが監督・脚本、ロバート・タパートが製作、ライミ、タパート、ブルース・キャンベルが製作総指揮を務め、エレン・サンドワイズ、リチャード・デマニンコル、ベッツィー・ベイカー、テレサ・ティリーらが出演している。
あらすじ
休暇を過ごしに5人の若者たちが山小屋を訪れる。その地下室で「死者の書」を見つけ、傍にあった音声テープを再生してしまう。それにより悪霊が蘇り、取り憑かれた若者たちが殺し合いを始めてしまう。
推しポイント
時代を感じる表現の粗さ、シーンの繋ぎの不自然さ、緊迫した状況のはずが妙に間抜けに見える演技と構図。そんな、現代であれば減点要素となる部分も多々あるが、それらを吹き飛ばすくらいの勢いに満ちたスプラッター映画。それまでのホラー映画では曖昧にしか見せなかったグロテスクな演出を堂々と押し出し、これでもか、とアイデアを盛り込んだ残酷描写を詰め込んでいる。続編である「死霊のはらわたII」は、ほぼ本作のリメイクとなっており、主演も同じ役者となっている。3作目「死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット」は唐突に舞台が中世となるが、あいかわらず主演は同じ役者が演じている。
死の王(1990)
1989年公開のユルグ・ブットゲライト監督の低予算エピソード映画。彼の前作『ネクロマンティック』と同様に、タブー視されるテーマである「自殺」と「死」を扱った作品。
あらすじ
月曜日から日曜日までの一週間、それぞれの曜日が別々のエピソードとして展開されていく。どの曜日の登場人物達も苦悩を抱えており、必ず誰かが死ぬ。
推しポイント
かなりポエミーな作風だ。お国柄もあるだろうけど、この湿った感じは日本的な感じを受けなくもない。どのエピソードも狂ったような人達ばかり出てくるように感じるが、実際、心を病むとこうなるのかもしれない。ホラー作品としての描写に派手さは皆無だが、一部、現実的に痛いと感じるシーンもあるので注意だ。別の国の映画ではあるが、「アングスト(1983)」にも通ずるトーン(色味)である。画質的に決して綺麗ではない。こういったホームビデオ的画質からくる低予算臭が、かえってこの手の作品にとっては良い意味でのヤバさを醸し出すことに繋がる。途中何度もインサートされる蛆(うじ)のたかる腐乱死体の早回しがシュール。
REC/レック(2007)
『REC/レック』(レック、原題:[Rec])は、2007年にスペインで公開されたホラー映画。R-15指定。キャッチコピーは「何が起こっても撮り続ける―」。
あらすじ
地域密着型TV番組のレポーターであるアンヘラとカメラマンが消防士の夜間の仕事を取材する。通報を受け向かったアパート内での異常事態に巻き込まれてしまう。
推しポイント
モキュメンタリーに区分される、視聴者にノンフィクション感を与える手法の作品。特徴としては映像が「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「クローバーフィールド/HAKAISHA」に代表される、POV(主観視点)で進行していく点である。平穏な日常から何やらただならぬ事態へ進んでいく様を、視聴者も現地にいるような感覚で味わえるため没入感が高い。映像のブレや乱れが多用されているので、合わない人にはとことん無理な表現が多いが、閉鎖空間で巻き起こる混沌とした雰囲気に引き込まれていくだろう。本作が一定の評価を受けた理由に、主人公であるアンヘラのビジュアルにあると思う。特別、美人では無いが愛嬌があり、彼女を撮影している相棒であるカメラマンが自分自身と感じるような緊密感が、作品の質に一役買っているだろう。ちなみに、続編である「REC/レック2」では、曖昧で終わった結末を深ぼる展開となっていくので、初作のパワーと新鮮味は無いなりに(新しい演出はある)観るべき作品である。しかし、以降の続編は本核であるPOVを廃したため凡作となり下がっている。
マーターズ(2008)
『マーターズ』(原題: Martyrs)は、2008に公開されたフランスとカナダのスプラッター映画。
あらすじ
何者かに拉致監禁され虐待を受けていた少女リュシーは、自力で脱出し養護施設に逃げ込んだ。そこで知り合った少女と過ごすうちに穏やかな日常を取り戻しつつあったが、得たいの知れない何かに襲われる幻覚に悩まされ続ける。15年経ちリュシーは、自身を拉致した一家と思わしき4人家族を惨殺する。
推しポイント
2000年代になってから公開されたフランス産ホラー映画達は凄まじいゴア表現で、まるで90年代の日本のマイナー作品群のようだ。「ハイテンション(2003)」「屋敷女(2007)」「フロンティア(2007)」も本作同様に、視聴後はゲンナリすること請け合いの怪作達だ。暴力表現や主人公の置かれた絶望的な状況などに耐えられず、途中で観るのを断念した人もいるだろう。(いづれの作品も女性が主人公である)そんな仏産ホラーの中から本作を挙げたのは、拉致監禁を企てた謎めいた団体の存在にある。その首謀者達の薄気味悪さと容赦ない非道な行為が、これまでの通例である「拉致されて暴力受けて、そこから脱出」といったお決まり展開との違いを生んでいる。「一体こいつらは何が目的なのか?」という疑問と、「絶望的な状況の少女がどうなってしまうのか?」と先が気になっているうちに観終わっているだろう。
スクリーム(1996)
『スクリーム』(原題: Scream)は、1996年のアメリカのスラッシャー映画。監督はウェス・クレイヴン、脚本はケヴィン・ウィリアムソンが務め、出演はネーヴ・キャンベル、デヴィッド・アークエット、コートニー・コックス、マシュー・リラードら。
あらすじ
カリフォルニア州の架空の町ウッズボローに住む女子高生シドニー・プレスコット(キャンベル)が、白いハロウィンマスクを被り黒装束を身にまとった正体不明の殺人鬼「ゴーストフェイス」の標的になる。
推しのポイント
ホラー映画が大衆に受け入れられ、山のような作品が生み出された80年代。特に米国産ホラー映画は「お決まりの設定」「お決まりの展開」を地で行く作品が大多数を占めていました。そのような作品群の中でもネームバリューを獲得したシリーズ「エルム街の悪夢」の生みの親であるウェス・クレイブン監督が、90年代中頃に放ったホラー映画の分岐点とも言える傑作シリーズの初作品。革新的だったのは、主人公達自身がホラー映画をメタ的解釈している点にある。「こういった場合の犠牲者は彼になる」といったホラー映画の「お決まり展開」を俯瞰で見る感覚を、自身達が巻き込まれている状況に当て込んで行動していくのである。そうした彼らの思考を、80年代のホラー作品を沢山観ている人ほど「わかるわかるー」と言った同調に繋がり、その読みを裏切る展開に引き込まれていくことになるのだ。同時期に公開された「ラストサマー」同様、新時代を感じる魅力的なキャスティングにより、古臭さを感じ始めていた80年代ホラー映画の名残りからの脱却に成功した。
リング(1998)
見た者を1週間後に呪い殺す「呪いのビデオテープ」の謎を追う、鈴木光司の同名小説『リング』を原作とする映画作品。
あらすじ
テレビ局のディレクターである浅川玲子は、都市伝説にまつわる取材の中で、観た者を1週間後に死に至らしめる「呪いのビデオ」に関わったと噂される男女が、数日前に奇怪な死を遂げた自分の姪と同日の同時刻に死亡していることに気づく。死の前に男女が宿泊していた貸別荘に足を運んだ浅川は、そこで貸し出しされていた1本のビデオテープを視聴してしまう。そのビデオこそが、「呪いのビデオ」であることに気づいた浅川は、自身に迫る死を回避するべく元夫で超能力者である高山竜司に相談を持ちかける。
推しのポイント
ホラー映画を紹介するなら本作は外せない。それこそ残酷描写であれば「ギニーピッグ」や「スウィートホーム」「オールナイトロング」「女虐」といった作品群や、「オーディション」、わりと近年の「グロテスク」「BRUTAL」など、一度観たらもう沢山といったゴアな作品達がある。ドラマ性を重視した作品であれば同監督の「女優霊」「仄暗い水の底から」、本作前年公開の「CURE」があり、他にも「黒い家」「富江」(両方とも原作のほうが良い)など、相当数のホラー映画が生み出されている。そのような数あるなかでも、本作「リング」が別格なのは、どうしても日本人のDNAに存在してしまう「怨念」といった目には見えない恐怖感をほじくり返した点にあるだろう。もちろん「怨念」から来る薄気味悪さはビジュアルへと昇華されていて、キーアイテムである「呪いのビデオ」の映像は至極の仕上がりだ。このショートフィルムは、誰しもどこかで過去に見たような気味の悪い映像の集合体であるが、恐怖と紐づく日本人固有の土着性を感じさせ、貞子の能力の片鱗を見せるイントロダクションにもなっている。浅川の死へのタイムリミットがあることにより、視聴者も同様に気が焦り、同様に解決の糸口が見つかったことへの安堵が生まれる。呪いのメカニズムの解明を主軸として展開していくが、怨念はあざ笑うかのごとくシニカルな結末へと向かう。一滴の血も流さずとも視聴者に恐怖を味わわすことが可能であることを証明した傑作だ。
シャイニング(1980)
『シャイニング』(The Shining)は、スタンリー・キューブリックが製作・監督し、小説家のダイアン・ジョンソンと共同脚本を務めた、1980年公開のサイコロジカルホラー映画。原作は1977年に出版されたスティーヴン・キングの同名小説。
あらすじ
コロラド州のロッキー山中にある人里離れた歴史あるホテル、オーバールック・ホテル。小説家志望であり、アルコール依存症を患っているジャック・トランスは、雪深く冬期には閉鎖されるこのホテルへ、閉鎖時の管理人としての職を得て、妻のウェンディ、一人息子のダニーを引き連れて訪れた。生活の中、ジャックと家族らは「存在しないはずの何か」の存在への恐怖によって精神を蝕まれていく。そんな中、ジャックは謎の存在と旧知の仲のように会話をするなど、ホテルの力の影響を強く受けていく。そして彼は狂気に落ちる。
推しのポイント
監督元来のシンメトリカルな画角感覚と、当時としては先鋭的な撮影技術が投入された結果、現代目線で見ても安定的で古びない映像表現となっている。舞台が閉ざされた巨大ホテルのため、広大ではあるが閉鎖空間でもあるがゆえに何度も同じ景観を見せられる。変化に乏しい映像が続き、視聴者が舞台設定に馴染んだ頃、唐突に不可思議な現象が差し込まれ始め、次第に恐怖感が高まっていく。今からこの映画を前情報を入れずに観るというのは無理に近いし、過激な描写に目が慣れた現代人からすると物足りなさを感じるであろう。しかし、本質的な恐怖は人の内にある狂気性の発現にあると理解すれば、身近な人間が殺人鬼と変貌していく過程が一番怖いことに気付けるだろう。
まとめ
以上が絞りに絞った厳選10作品の紹介でした。冒頭でも書きましたが、僅差で選外とした作品が膨大にあります。そもそも「イット・フォローズ」や「Rec/レック」を入れるくらいなら、「エクソシスト」や「オーメン」、「シックス・センス」や「エスター」が入るべきだろう、って思うかもしれません。でもこれは、私のマイ・ベストなので仕方ありません。あしからず。