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Androidのスマートタグについて考える

私が iPhone ユーザーであれば、迷わず AirTag を選ぶんだけど。

もし、気づかずに外出先で家の鍵や財布などの貴重品を落としてしまったら…。スマートフォンが普及する以前であれば、当たりを付けて必死に探し回るか、交番に行って紛失届けを出して善意を待つくらいしか手立てがありませんでした。だけど今なら「スマートタグ(スマートトラッカー/紛失防止タグ)」を貴重品に取り付けておけば、再び自分の手に戻せるかもしれません。スマートタグは数多くの種類が販売されています。どれを買えばよいのだろうか? iPhone を使っているなら迷わず AirTag を使えばいいと思いますが、Android の場合は、主宰の Google から直接リリースされていないので、サードパーティ製から選ばねばなりません。しかも iOS と比べてスマートタグへの対応の遅かった Android においては、どのスマートタグを選ぶべきか慎重になる必要があります。その点について解説します。

混同されがちなGPS発信機とスマートタグの違い

まず、誤解されがちなことを明確にしておきます。
Amazon などで数多く販売されているスマートタグが、あたかも GPS を搭載しているかのような商品名であったり、商品説明がなされています。しかし、2,000円~3,000円程度で販売されているタグやトラッカーに GPS は搭載されていません。

SwitchBotアプリ

スマートフォンを黎明期から使用されている方ならおわかりでしょうが、GPSを使用すると凄くバッテリー消費しますよね。スマートウォッチなどでも、ワークアウトのためにGPSを使用すると、どんどんバッテリー残量が減っていきます。スマートフォンのバッテリー容量が4,000mAhとして、スマートタグに多く用いられるボタン電池は僅か240mAhしかありません。車両の盗難に備える用途の上記GPS発信機のようなボディの大きなものでも、5,000mAhで15日程度のバッテリーもちです。スマートタグの電池寿命が大体1~2年を謳われているわけですが、GPSを搭載して通信していたら、そんな長期間バッテリーがもつわけありません。
※名の知れたメーカーはスマートタグにGPSを入れた商品名をつけません。これで胡散臭いメーカーとの選別が出来ますね

そんなわけで、スマートタグにGPSは内蔵されていません。「位置情報」はスマートフォンにインストールする「コンパニオンアプリ」がスマートフォンの GPS を使用して入手しているのです。

スマートタグはスマートフォンと Bluetooth で接続されます。その接続が切断された地点の位置情報を、スマートフォンの GPS で入手し、コンパニオンアプリに記録するという仕組みです。ですので、大抵のスマートタグは Bluetooth 接続が切れた時点で通知してきます。貴重品を落とした直後に気付けないと意味がないですから。ですが実際、切断後すぐに通知してくれれば良いのですが、これがまた信頼できないケースが多い。これについては実例をもとに後述します。
Bluetooth の接続距離は、スマートフォンとの相性や付近の電波干渉状況にもよるでしょうが、数m~100mくらい。もし、最大 100m くらい通信が続いた場合、そして切断後にすぐ通知が来なかった場合、どんどん落とし物との距離が離れていき、仮に落としたことに気付けて現地に戻ったとしても、誰かに持ち去られた後である可能性が高いわけです。

※海外の検証動画によればiPhoneとAirtagのBluetooth最大接続距離はひらけた場所で30m

ちゃんとしたスマートタグとは

2021年に Samsung から「Galaxy SmartTag」が、Apple からは「AirTag」がリリースされました。本格的な探知機能を備えたスマートタグと言えば、この2つと言えるでしょう。両方とも「UWB(Ultra-Wide Band=超広帯域無線通信技術)」を備えています。タグとスマートフォンが UWB 通信範囲内(10m程度といわれる)に入っていれば、探索アプリにてタグの位置が「どの方向」に「どのくらいの距離」であるかが表示される。あとは、指し示す方向に歩いていけばタグが見つかるでしょう。また、通信範囲外の場合でも、先に書いた Bluetooth 切断時点を地図上に示してくれます。こうした巨大テックが造ったタグ以外、数多く販売されているサードパーティ品の多くは UWB には対応していません。Bluetooth 接続のみなので、接続が切れた時点の位置情報を示してくれるのみです。Samsung は開発力があるので、Apple 並のことを独自にやってのけました。

※iPhoneでUWB対応のモデルはiPhone 11以降
※AndroidでUWB対応モデルは、Google Pixel 6 Pro以降の上位モデル、Galaxy S21以降の上位モデル(そのほかのAndroid端末に関しては情報がなく不明)

AirTagが革新的な理由

もしAirTagが持ち主から離れ、Bluetooth圏外にある場合は、「探す」ネットワークがAirTagを追跡するお手伝いをします。「探す」ネットワークとは10億台に及ぶApple製デバイスのことで、紛失したAirTagからのBluetooth信号を検知し、位置情報を持ち主に中継します。このプロセスはすべてバックグラウンドで匿名で行われ、プライバシーが守られます。
引用:Apple

あなたの落とした AirTag の傍を通った iPhone ユーザーたちが、その位置情報を共有してくれます。(※すれ違い通信のようなイメージですが、共有した人がそのことに気付くことはありません)これにより、持ち去られによりタグの位置が移動していても、ある程度の追従性があるということになります。AirTag の周囲を iPhone を持った人が歩けば歩くほど、位置特定の精度があがります。

この革新的な仕組みが、数年遅れで Android にも実装される見込みです。Google の「Find My Device(デバイスを探す)」のアップデートにより、オフラインのデバイスでも他の Android ユーザーが近くを通った際に位置情報の共有がなされるとのことです。世界的に見れば iPhone ユーザーより Android ユーザーのほうが多いですが、7割が iPhone ユーザーの日本において、どれだけの国内 Android ユーザーがこの探知機能を享受できるかは未知数です。

※位置情報共有はエンドツーエンド暗号化で行われます。タグと、タグを紐づけした端末以外の中継端末に位置情報などは残りません

Androidユーザーが注目すべきスマートタグ

2024年に日本で発売される見込みのスマートタグでは「Chipolo One Point」と「moto tag」に注目です。どちらも、公式に「デバイスを探す」での紐づけに対応しています。前述の位置情報共有に対応しているということです。さらに moto tag は前述の UWB にも対応しています。UWB に対応しているスマートフォンをご使用の場合には、よくわからないスマートタグを選ぶより有益だと思います。しかし、これら新製品は既に海外でリリース済ですが、Reddit などのフォーラムでの報告を読む限り、現状は「デバイスを探す」側の未対応で使い物にならないようです。単なる Bluetooth タグとしか機能しないということです。日本で発売されても、数ヶ月は様子見したほうがよいでしょう。

※記事執筆(2024年8月初旬)時点では、Android側が未対応でUWBでの探索が使用できないようです
※記事執筆(2024年8月初旬)時点では、「デバイスを探す」の不具合(?)により、位置情報の共有などされないようです

私が実際に使ったスマートタグ

最後に私が実際に使用していた(或いは現時点では使用している)スマートタグのリアルな使用感を書いておきます。細かな製品仕様は書きませんので、商品ページなどで確認してください。

まず「Eufy」のほうですが、2点の理由により使用をやめました。

  • 1mの距離でも置き忘れ通知が頻発
  • スマートフォンの夜間バッテリー使用率がNo.1

私はパンツのベルトからキーホルダーを下げ、そこにスマートタグも付けています。デスクワークなどで動きのない状態、しかもスマートフォンとタグの距離は僅か 50 cmなのに、「置き忘れ通知」が頻発します。逆に「置き忘れ通知」が届くべき Bluetooth 通信が切れた際の通知が遅い場合や、通知されない場合も高頻度でありました。また、夜寝ているあいだのスマートフォンのバッテリー消費を調べると、このスマートタグのコンパニオンアプリが一番消費率が高い日々が続きました。確かにタグの位置を確かめるために一定周期で通信するのは当然ですが、通知管理アプリなど常駐アプリが多数あるなかで、これが一番消費するのは気持ちよくありません。このタグは 2 個買ったので個体差って可能性も低いかと思う。スマートフォンとの相性もあるかもしれませんが、だとすればどうしようもありませんね。

もう一つの「Tile Pro」に関して。
こちらも以下2点の理由により、先に紹介した moto tag などへの変更を考えています。

  • 置き忘れ通知が有料
  • Tile ネットワークに期待できない

夜間のバッテリー消費に関して Eufy と比べて少なく、かといって通信もちゃんとしているようなので、そこは問題ありません。購入前からわかっていたのですが、Tile は「置き忘れ通知」が有料(サブスクリプション)です。Chipolo One Point や moto tag の登場を知っていたら買わなかったのですが、購入時点でそのリリース情報は無く、Tile ユーザーネットワーク(※)による位置特定に期待をしていたわけです。それが良ければ有料プランも検討しようかと考えていました。

※先のAppleやGoogleの仕組みに似てますが、Tileユーザーに限られたネットワークとなます

しかし、スマートタグとしては古参な Tile ですが、利用者の数(アプリ内から今いる地点から数十 km 範囲に何人のTileユーザーがいるか数値で見れる)はとても紛失時に期待できるものではありませんでした。

※地方住みなのでこのようなユーザー数なだけで、都会ではもう少し多いのかもしれません

まとめ

現時点(2024年8月)ではこういうことになります。Google が「デバイスを探す」をキッチリとメンテンナンスし、対応したスマートタグでの位置共有が確認されてから購入しましょう。Apple から3年も遅れているうえ、いまだグダグダしていて先が見えないので、今は買わないほうがいいです。

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